甘い生活  Casa al mare
驚くほど強い力で、清海さんは私を抱きしめる。

やはり、今は純粋で孤独な少年に戻った清海さんなのだと思う。

不思議なほど、ごく自然に私たちは唇を重ねた。

何故だろう?

ファーストキスのはずなのに、初めてのような気がしない。

潮騒だけが聞こえる海辺の家。

きっと二人は、遠い遠い昔にも、こんな海辺の家で一緒に暮らしていた。

そして、死がふたりを引き裂いたあと、永い時間をかけて再びめぐり逢い、もう一度恋に落ちた⋯⋯まるで、そんな気がする。

「不思議だな⋯⋯海香子ちゃんの唇の感触、ずっと前から知ってるみたいで」

清海さんも同じように思っていたのか。

「本当に不思議だけど、気持ちを打ち明けるのが怖かったくせに、今は何も怖くないんだ。海香子ちゃんとなら、永遠さえ感じられる」

「きっと、そうなんだと思う。私たちは永遠に終わらない何かで結ばれてるような気がするから」
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