悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 七月。サンノゼに戻って数か月が経過していた。
 小さなオフィスだから社長室と呼ぶほどのものではないが、一応楓のデスクはほかのスタッフとは別室にある。そこにふらりと雄大が顔をのぞかせた。

「来月に控えた婚約者のバースデー、今年こそプレゼントは僕に任せてみませんか?」

 もはや毎年恒例になったやり取り。楓はいつも「結構だ」と短く答えるのだが、ふと思い立って今年は答えを変えた。

「そうだな。今年はちょっと協力してほしい」

 雄大が目を白黒させで驚いたあとで、俄然やる気を出してくる。

「やっとわかってくれたんですね! 彼女に訴えられる前に賢明な判断をしてくれてなによりです」

 ものすごく失礼な彼をジトッとした目でにらみつけ、楓は細く息を吐く。

「カリフォルニアで一番上等な宝石店を探してほしい」

 聞いた雄大の顔がパアァと新品の蛍光灯のように明るく輝く。

「せ、成長しましたね、鷹井さん。そうです、女性にはジュエリーですよ! ジグソーパズルよりは間違いなく彼女の心をつかめるはず! さっそくリサーチしますからね!」

 雄大はウキウキした様子で部屋を出ていった。お調子者だが、どんな仕事もソツなくこなす男なので、リサーチ結果には期待できるだろう。
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