悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 志桜はさっそく彼にプレゼンを始める。会社の概要説明などは不要だ。楓はKAMUROのビジネスをよく知っているし、それは志桜のほうも同じ。もともと、自分たちの婚約は両家のビジネスの都合で結ばれたものだから。

 鷹井AIラボの親会社であるITの鷹井グループは、楓の父が代表を務めている。
 グループの始まりはECショッピングサイトだ。まだ店舗での対面販売が主流だった平成初期に、多様な商品を扱うオンラインショッピングサイト『Tbuy』を立ちあげて大成功をおさめた。今ではECショッピングだけにとどまらずクレジットカードやネットバンクなどの金融、スマートフォンなどの通信サービス、広告代理店なども傘下に持つ多角経営の大企業となっていた。

 だが、自分たちが婚約した当時はまだ鷹井家にも弱点があった。平成のITバブルをけん引したとして注目を集めてはいたが、財界ではどうしても〝成りあがり〟と低く見られがちだったのだ。旧家で長い歴史と伝統を持つが、肝心のビジネスが先細り気味だった神室家とはちょうど対照的に……。

(シンプルで、わかりやすい政略結婚の構図よね)
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