白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
 中にはもうすでに二人がいる。
 
 ああ、ちょうどいいわね。
 食事中にするような話でもないけど、人が揃うのはここしかないもの。

「ダミアン様、使用人を増やすことは出来ないのですか?」
「なにを急に言い出すんだい、アンリエッタ」

 私は簡素な朝食が運び始まった頃、夫へ話しかけた。
 家族が集まる時間は、この朝食の時だけ。

 これを逃したら、また一日が無駄に過ぎてしまうのだ。

「嫁のくせに、掃除も満足に出来ないなんてどういうことなの。全く使えやしない! タダでご飯を食べようなどと、どれだけ厚かましいのよ! 働かない者には食べる権利などないのよ」

 金切り声で、姑が私を睨みつけながら叫んだ。
 おー、なんかうちの父みたいなこと言うのね。

 貴族ってそういう考えはないのかと思っていたわ。
 結構平民と変わらなくてビックリだわ。
 さすが貧乏貴族様。

 だけど私も引き下がるわけにはいかないのよ。
 人手がないと計画も進まないし。

 だいたい、そうでなくとも無理がある。

 この屋敷で働いているのは私と一人のシェフと、洗濯と買い付けをしている侍女だけしかいない。

 義母は暇を見つけては屋敷の中を徘徊し、私の掃除に文句をつけるだけで特に手伝うわけでもない。
 たった三人でどうしろっていうの。

「そうは言われましても、私一人では限界があります」
「ん-。本当に全力でやってるのかい? 手を抜いているから、間に合わないのではなくて?」

「私は手など抜いておりません。一人でこの広いお屋敷の掃除も修繕も行っていますが、手伝ってもらえないのなら、せめて誰かを入れてください」
「没落寸前の貴族だったから、この嫁はうちを馬鹿にして働かない気なのよ! だから簡単に人を雇うだなんて言うんだわ」

 どこをどうしたら、そこに繋がるのかしら。
 被害妄想(ひがいもうそう)もはなはだしい。

 第一に没落寸前だったのは、誰のせいでもなく自分たちのせいでしょう。

 それに貴族の家に嫁いだからって、こんな使用人以下にこき使われるのっておかしいと思わないのかしら。

 この人たちにとっては、嫁はタダ働き要員(よういん)としか考えてないのよね。

 まだ商会で働いていた時の方が、微々(びび)たるものでも賃金をお小遣いとしてもらえたのに。

 何から何まで、頭が痛くなるようなものばかりだった。
< 33 / 236 >

この作品をシェア

pagetop