すこしずつ、恋をする。

すれ違う夜

都会のビルの最上階にあるレストラン。同窓会の夜景がガラス越しに広がり、煌めく街の灯りはひどく冷たく見えた。

麻衣は受付で名札を受け取り、少しだけ息をつく。高校時代は控えめで目立たなかった自分が、今は大人の装いでここにいる。シンプルだが上品なワンピースに、控えめなアクセサリー。心の奥で、直樹に「変わったね」と言われることを、どこか期待していた。

「麻衣……?」

振り返ると、直樹が立っていた。高校時代、同じクラスであまり話すことはなかったけれど、いつも心に残る存在だった。今も変わらない柔らかい笑顔、だけど目の奥には微かに疲れが滲む。

「久しぶり……」

自然と小さくなる声。直樹も微笑む。二人の間には、かつての無邪気な時間の影がちらつく。しかし今はもう、取り戻せない現実があった。

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