雨の闖入者 The Best BondS-2
「……?」


ジストは片眉を上げた。


少女の瞳の色が、普段とはどことなく違う。


比喩などではなく、確かに色が変化しているのだ。


緑がかった蒼の目はそのままに、蒼がかった翠の目の色が。


(もう片方の色と同じに……?)


変化し、同色へと近付いた双眸は、太陽のような華やかな光を帯びてゼルを貫く。


「呼んで、ゼル! そうすればきっと、あんたの元へ行ける!」



何故、そんな風に思ったのか。

エナ自身、わからなかった。

だが、心が叫んでいた。



声は、届く。

言霊はきっと真っ直ぐに彼へと届く。

そしてそれに応えてくれさえすれば、夢は霧散すると信じた。



現実に勝る夢など、存在してはいけないものだから。





全身全霊を込めて。

応えを欲するが故に、はっきりと呼びかける。



「ゼル」



ゼルがまた呻いた。

小さく身じろいだ。

そして、確かにその口が動いた。



声が、届く。



応えが、返る。




「……エ、ナ……! ジスト……っ!」



苦しげでありながらも力強い言霊に、エナは微笑んだ。


ジストが目を瞠った。




そうして、空間が歪みを帯びた。


正しい現実へと立ち戻る為に。







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