雨の闖入者 The Best BondS-2

「ってェことは、やっぱ、手を引く気はねェっつーことだな?」

「障害、避けて通りたい気持ちてんこ盛りだけど、ぶつかった障害から逃げんの、ヤなの」


エナらしい発言にゼルは苦笑した。


「お前、迷子になっても絶対来た道は戻らねぇタイプだろ。っつーか、てんこ盛りって……言わねェだろ、最近」

「戻ったところで、同じ景色しか無いもん」


戻るくらいなら、少々遠回りになっても違う道を選ぶ。

一度しか無い人生だからこそ、後退することだけは自身に許したくない。


「そりゃ密度の濃い人生だこって」

「明日があるとは限んないからね」


エナは、ふふ、と笑う。


「それにホラ、ジスト、今あんなでしょ。投げ出すわけにいかないじゃん? 仲間なんだし、さ」


ジストは確実に夢に侵されている。

この町を出たところでその悪夢が消える確証は無い。

それに、あの分だと早々に精神が参ってしまうことは目に見えている。


「仲間、か……」


ゼルが呟く。

しんみりと、どこか腑に落ちていないような声で。


「仲間でしょ」


確認というよりは事実を告げるだけの言葉。

ゼルは、うーん、と唸った。


「重てェ言葉だな」

「そ?」


熱いタイプのゼルらしからぬ言葉に、エナは首を傾げた。


「夢で手いっぱいだかんな。そんなモンまで抱えきれそーにねェや」


情に厚いが故の発想だ。

抱えるものじゃない、と言ったところでゼルにはきっとわかるまい。

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