吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 ほどいてばらばらになった髪から心地良い刺激が伝わる。だれかに頭を撫でられているような感覚だ。ふわふわとした微睡みの中、深緋の意識はゆっくりとすくい上げられる。

 不意に重いまぶたが開いた。暗かった病室が明るくなっている。

 頭を持ち上げると、両腕が痺れた。体のあちこちが怠いが、それも仕方ない。泥のようにへばりつく眠気を無理やり振り払い、さっきまで自分の頭にあった手を見つめた。

「おはよう、深緋」

 大好きな、温かみのある声。じわりと視界が滲むのを感じて、(はな)を啜る。「おはよう」と言いながら、深緋は顔を上げた。上体を起こした白翔が、眉を下げて、へへっと笑った。

「ごめん、深緋。俺、なんかヘマしたよな? なんで病院にいるのか覚えてなくて」

 さっきまで自分の頭を撫でてくれていた右手を、両手でギュッと包み、ううんと首を振る。その手から確かな体温を感じて、また目頭が熱くなった。

 今は何時だろう? 白翔が普通に接してくれるところを見ると、まだ吸血のタイムリミットは過ぎていないはず。

 試しに腕時計を確認した。午前七時十五分。あと四分ちょっとだ。ぎりぎり間に合った。

「深緋と部屋が別々になったところまでは覚えてるんだけど……俺、何で病院に?」
「一度に大量の血を失って、意識をなくしてたんだよ」
「……え。血を??」
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