恋愛Sim★comp
次の日。君のバイト先に足を運んだ。
この寒い時期だけの、アルバイト。店頭で、ティッシュ配り。
俺のバイト代は、一年後に受け取ると言った。
君も、本当は何かを感じている。だから受け取らない?
陰から見つめる。一歩間違えば、ストーカーだ。
壁にもたれ、ネタになりそうな本を広げ読んで時間を過ごす。
バイトが終わるまで、待ってみることにした。
売れない本も、その作者の想いを伝える。
俺の作り話より、現実的で夢がある。
その世界は、俺の未熟さを教えてくれる。
売れる売れないの差は、一体なんだ?
この世界の混沌とした中、俺は消えても大差ない。
俺の本の中、“主人公の俺”は成長する。
担当の嶋関は、下品なことを平然と言う。
どうして、手を出さないのか。
出せるはずが無い。物語じゃない。
本の中で、二人は付き合っている。
お互いに“好き”で触れたい。それを望む。触れても良い。
けど、現実はどうだ?
俺たちの間に、それは赦されない。
俺は、傷つく。心が痛む。
誰が癒してくれる?触れることさえ、お金の契約。
“愛情”が欲しい。
まだ、一ヶ月。君と出逢って、たった……何日のこと?
確実に減り続ける日々。俺を狂わす時計の針よ止まれ!
冬の陽は短い。すぐに闇が来る。
時を永遠に止めて、君を得ることが出来たら。
この関係を止めて、告白したら……君は受け入れてくれるだろうか?
君の心が欲しい。
どうすれば良い?擬似恋愛は、教えてはくれない。
現実が厳しいと、ただ冷たく俺にのしかかる。
恋とは何だ?
恋愛物語?作り話の世界に、埋もれていたほうが幸せだろうか?
比名琴、答えを……
「幾久?こんな寒いところで、何をしてるの?」
君の声も、愛しく思う。
俺だけに聞かせて欲しい。誰にも触れさせたくない。見せたくない。
俺だけが閉じ込めて……ふっ。犯罪者の気持ちまで分かるのか?
何て、醜い恋心だろう?
「大丈夫?泣きそうだよ、何かあった?」
君が頬に触れ、感情が込み上げる。
熱い涙が、頬を伝う。
「比名琴……」
……好きだ。