恋愛Sim★comp

2人の間に重い沈黙が続く。
先に口を開いたのはあなた。残酷な一言は、私の心に刺さる。
それでも、願う。あなたの温もりを。触れる肌を、離したくないと……。

「比名琴、お願いがある。手を繋ぎたい。……君の望む金額を、俺に言って。ね……いいかな?」

私は、涙を我慢する。今は、嬉しいはずだから。
私は、嘘の笑顔で手を差し伸べた。微笑む幾久。
時間は緩やかで、街灯が優しく私たちを包む。まるで、恋人のような景色。
心は繋がらないのに……ロマンチックなんて……私の辞書にはない。
書き込んだのは、作家のあなた。
憎い……愛しさに、憎しみがわく。
残酷な……優しい手が、私の手にそっと重なる。幸せが包む。
言葉にならない。この時間が、永遠に止まれば良い。このまま死んでしまいたい。

手を重ね、微笑むあなたは優しい。
目を細め、愛しいかのように私の手を包む。
「ね、俺のポケットに入れてみてもいいかな?」
「……勝手にすればいいわ。」
私は、冷たく視線を合わさない。
あなたの表情なんか見ることも出来ない。
何を考えた?何を感じた?どうして……
そうね、仕事。これは、お金をもらったビジネス。
私は、笑顔を作って視線を向けた。
あなたは、私を見ないで……真っ直ぐ道を見つめる。
真剣な表情。心、ここにあらず……。
私の手は、あなたに包まれ……あなたのコートの中にいる。
温かい温もりは、いつか誰かのもの。
同年代の男の子が着ないような、高いコート。
大人びた姿は、今書いている小説の主人公?
そして、私は……物語の中だけの恋人。
あなたの目に映らない……比名琴……。


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