悪役令嬢の鳥籠

「アーシェ、君の泣き顔は最高だね。しかも、嫉妬に狂うほど僕を愛してくれていたんだね」

 なぜだろう。
 バッドエンド回避に走っていたはずなのに、何かがおかしい。

「牢屋はダメだね。他の者の瞳に君が映ると思うと、気になって仕事も手に付かないよ。君にはもっといい籠を用意してあげよう」

 ルドは手を一度引き抜くと、手に持っていた鍵で牢屋を開けた。
 そして拘束されていた腕の鎖も外す。見上げると、その瞳にはほの暗い光を称えていた。

「ルド様、私……」
「いいんだよ、アーシェ。やっと僕を愛していると認めてくれたんだから。目一杯可愛がってあげるよ」

 見た目で判断した私がダメだったんだ。
 これ、メインルートというか、ヤンデレのルートではないだろうか。

 その上、愛してると言わせるためにわざと追い込んで、私が彼と同じ台詞を言った時点で、目標を達成してしまったパターンだ。
 断罪を免れれば、ハッピーエンドだと思ったのに。

「ルド様」
「怯えなくていいんだよ、アーシェ。誰も邪魔されないところに入れてあげよう。君の気が二度と他に向かないように。僕も愛してるよ、アーシェ」

 ルドが私の体を抱き上げた。
 冷えきった体はいうことを聞かず、身動きひとつ出来ない。

 ランプの明かりはゆらゆらと揺れ、心もとなく足元を照らすだけだった。
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