転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

「クロウ様がこのスイーツをお作りに……?」

「お菓子作りも得意なのですね」

「なんだか少しかわいらしい特技ですね」

 心なしか使用人たちがクロウに向ける視線が変わった気がする。
 甘くて美味しいスイーツを作った。
 その事実があるだけで、不思議とその人の印象は柔らかいものになる。
 どうやらクロウのイメージをよくする作戦は、成功したと見てよさそうだ。
 屋敷の外にはまだまだ、クロウを血染めの貴公子やら暴君の血を引く息子と怖がる人は大勢いる。
 けどいつかはその人たちにも、クロウの心根の優しさを知ってもらえたらいいなと思った。
 ケーキを食べ終えて満足げに空いた皿を見つめていると、不意に頭の後ろから小声でクロウに問いかけられる。

「俺に気を回したのか?」

「……なんのことでしゅか?」

「……いいや、なんでもない。子供がそこまで考えているはずがないか」

 こちらの思惑を気取ったらしくそんな質問をしてくるが、故意に狙ったものとは思わなかったらしい。
 確かに子供の考えることではないので気のせいと思うのが普通だ。
 それでもクロウはアウルに恩義を感じたようで、それ以外のことも含まれているかのような、気持ちのこもったひと言を耳元で告げてきた。

「色々とありがとう、アウル」

 ……色々と。
 その言葉を聞いて、アウルは色々とあったこの数カ月の思い出を振り返る。
 前世を含めても不幸だらけだった人生が、クロウと出会ってからがらりと変わった。
 独りぼっちだったところを拾ってくれた。自分に才能と価値を見出してくれた。大切な居場所を与えてくれた。
 優しい人たちにも囲まれるようになって、クロウが自分に幸せを運んでくれたのだと、アウルはそう確信している。
 だからアウルから返す言葉も、彼と同じものだった。

「こちらこそ、いろいろとあいがとう! クロウおにいしゃま」

 アウルは頬っぺたにクリームをつけたまま、無垢な笑顔で後ろを振り返る。
 それに釣られたようにあのクロウも顔を綻ばせると、後ろから優しくぎゅっと抱きしめてくれた。
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