転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
 クロウは幼い頃から、厳格な父の教えを言い聞かされてきた。
 公爵家の人間は人を従えさせる側の人間だと。
 そして人を従わせるのに最も効果的なものは〝力〟と〝威厳〟であると。
 期待や信頼は不要。力を示し厳格な態度を貫くことこそ指導者の最たる責務。
 その信条を叩き込まれたクロウは、父の教えが正しいと信じて、周りに厳しく接し続けてきた。
 敵国との戦いでも敵兵に容赦をせず、力のままに蹂(じゅう)躙(りん)するその姿から血染めの貴公子と恐れられるようになった。
 そのおかげで誰も逆らうことがなくなり、人を従えさせる側の人間として威厳を確立することができた。
 だが、クロウは周りからの視線を心地よいものだとは思わなかった。
 強大な力に怯える目。築き上げた威厳に服従を示す姿勢。緊張と恐怖が入り混じって震え上がる声。
 これが本当に上に立つ者に向けられるものなのだろうか。
 さらに十五歳の時、父のレイヴンが率いる軍でボイコット事件が発生した。
 実に軍の三割ほどの兵士たちが軍事作戦への参加を拒否し、そのまま軍を辞めてしまうということがあったのだ。
 理由はレイヴンの度重なる〝暴力的発言〟と〝体罰〟、さらには配慮に欠けた指揮が原因だという。
 そしてボイコットの最大の引き金になったのは、妻子を持つ兵士が病気に罹(かか)った家族に会うために休暇申請をしたが、一も二もなく却下されたことだった。
 加えてその兵士を皆の前で晒し上げて、父は悪態をついたのだ。

『この腑(ふ)抜(ぬ)けが。家族にかまけている時間など無駄だ。兵士としての責任を持て』

 そう批判したことで、それまで不満を募らせていた兵士たちが結託し、軍事作戦への参加を拒否するに至った。
 結果的にボイコット事件直後の軍事作戦では、現代でも指折りの魔法使いとして名高いレイヴンが才腕を振るって、たったひとりで敵国の一師団を鎮圧させて勝利で終わらせた。
 そのため世間では、当の戦自体は英雄レイヴンの美談として語られているが、裏の実情を目の当たりにしていたクロウは胸の内の疑念をさらに膨らませた。
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