あなたの1番になりたい。
アルコールの匂いが少しだけ薄まった保健室で、永原先輩が右膝を軽く伸ばした。
「いや〜助かったわ。宮野ちゃん、手当上手いね」
「…そうですか?」
「うん。普通に医者向き」
「褒め方が適当です」
そのやり取りの途中で、結城先輩がもたれ掛かっていた壁から背を離した。
「……」
何も言わないまま、出口の方へ歩く。
「あ、結城どこ行くの?」
永原先輩がすぐに声をかけるが、結城先輩は足を止めない。
「用事」
「いやいや、用事なんてないでしょ」
「ある」
光よりも速い即答。
結城先輩の様子を見ていた永原先輩がニヤッとする。
「逃げたな」
「違う」
「絶対逃げた」
「違う」
ドアノブに手をかける結城先輩の背中は、いつも通り落ち着いているのに、なんだか少しだけ早い気がする。
永原先輩が両頬のエクボを光らせながら言う。
「宮野ちゃん、置いてかれるぞ〜」
「別に、…」
何か言葉を言いかけて、途中で止め、結城先輩が一瞬だけこちらを見る。
ほんの一瞬。
しかし、視線が合う前にすぐ逸らされ、
先に戻る、と言ってパタン、と扉の閉める音を響かせた。
「…置いてかれちゃいましたね」
「うん。たぶん今、逃げた」
用事…って言ってたな。
あ、そっか。あの子を迎えに行かなきゃいけないのか。
保健室の壁に掛かっている時計を見ると、もうすぐ下校の時間を迎える。
用事は本当にあって、愛ちゃんの迎えに行かなきゃいけないんですよー、と言った方が良いかもしれないが、そうなったらあの子の説明をしなければならない。
うん、それは面倒くさい。
何も言わない方が良いと判断して、私は返事をしないまま、ピンセットを握り直した。
あと2箇所、絆創膏を貼らなければならない仕事が待っている。
「いや〜助かったわ。宮野ちゃん、手当上手いね」
「…そうですか?」
「うん。普通に医者向き」
「褒め方が適当です」
そのやり取りの途中で、結城先輩がもたれ掛かっていた壁から背を離した。
「……」
何も言わないまま、出口の方へ歩く。
「あ、結城どこ行くの?」
永原先輩がすぐに声をかけるが、結城先輩は足を止めない。
「用事」
「いやいや、用事なんてないでしょ」
「ある」
光よりも速い即答。
結城先輩の様子を見ていた永原先輩がニヤッとする。
「逃げたな」
「違う」
「絶対逃げた」
「違う」
ドアノブに手をかける結城先輩の背中は、いつも通り落ち着いているのに、なんだか少しだけ早い気がする。
永原先輩が両頬のエクボを光らせながら言う。
「宮野ちゃん、置いてかれるぞ〜」
「別に、…」
何か言葉を言いかけて、途中で止め、結城先輩が一瞬だけこちらを見る。
ほんの一瞬。
しかし、視線が合う前にすぐ逸らされ、
先に戻る、と言ってパタン、と扉の閉める音を響かせた。
「…置いてかれちゃいましたね」
「うん。たぶん今、逃げた」
用事…って言ってたな。
あ、そっか。あの子を迎えに行かなきゃいけないのか。
保健室の壁に掛かっている時計を見ると、もうすぐ下校の時間を迎える。
用事は本当にあって、愛ちゃんの迎えに行かなきゃいけないんですよー、と言った方が良いかもしれないが、そうなったらあの子の説明をしなければならない。
うん、それは面倒くさい。
何も言わない方が良いと判断して、私は返事をしないまま、ピンセットを握り直した。
あと2箇所、絆創膏を貼らなければならない仕事が待っている。