(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
さすがにもう帰っただろうと考えつつも、念のため彼女が向かった方向に足を進めた。


「……うわ」


酒に酔って眠る、先ほどの女性の姿にため息がこぼれた。

六月とはいえ深夜の気温はまだそれほど高くはない。

寝落ちしていた俺が言うのもなんだが、野外で眠るのは危険だ。

警戒心と責任感の強い姉が鍵まで預けるほど信用しているのだから、きっと大切な友人なのだろうし、このまま放っておくわけにもいかない。


「ええと、浦部さん? 風邪を引くし起きて、送るから」


彼女のそばにかがみ込んで声をかけるが、一向に目を覚まさない。

再度話しかけるため、顔を近づけたとき、彼女の目の縁、頬に涙の痕を見つけ、どうしてか心が騒いだ。


「……課長……」


薄く開いた唇から漏れた弱々しい声にハッとする。


「……課長って、誰?」


無意識に俺の口から質問が滑り落ちる。

声が届いたのか、緩慢な動きで長いまつ毛を持ち上げた彼女がふわりと頬を緩めた。


「憧れの、人。でもね、今日失恋したの」


答えを告げた途端、彼女の目から新たな涙がこぼれ落ちた。
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