(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
パンプスとバッグはクローゼットにきちんと置かれていて、ジャケットも丁寧にハンガーにかけられていた。

中身をサッと確認するも、とくに変わった様子はない。

この男性は飲酒で眠っていた私を介抱してくれたのかもしれない。

だとしたら、とんでもない迷惑をかけている。

情けなさを通りこして、申し訳なさが込み上げる。

音をたてないよう注意して、荷物を抱え洗面所に向かう。

肩までの黒髪は乱れ、化粧の崩れた無様な姿が鏡に映っている。

パンストは破れ、スカートもしわだらけ。

でも今はかまっていられない。

一刻も早くここから立ち去りたい。

お世話になったとはいえ、恥ずかしすぎる。

パンストを脱ぎ、バッグに押し込む。

パンプスを履いて、近くにあったメモに伝言を残す。

焦りと動揺で指が震え、文字を書くのに手間取る。

やっと書けたメモの横に宿泊代金を想像して紙幣を置く。

部屋から出て、早足でエレベーターホールへと向かう。

エレベーターを待つ間も男性が起きないか心配で、何度も振り返ってしまう。

やってきたエレベーターに乗り込み、扉を閉めるボタンを連打する。

ロビーフロアに到着し、うつむいてフロントの前を足早に通り抜けて外に出た。

広がる青空に戸惑いつつ、エントランスにとまっていたタクシーに乗り込む。

運転手に行き先を告げ、建物を振り返った途端、息をのんだ。

ここは二年前に完成した高級ホテルだ。

エステやスパなどの施設も充実しており、人気が高く、なかなか予約がとれないと親友から聞いた覚えがある。

部屋に置いてきたお金では足りない気がして、再び血の気が引くが今さらどうしようもない。

タクシーの後部座席シートでため息をつく。
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