後悔しない、ひとつのこと
部屋に入ると、爽がいた。

でも俺が入ってきたのには気づいてないようで。

どんどん爽に近づいていく。

それなのに......

すぐ側まで来たのに。

爽は俺の存在に気づいてはくれなかった。

「なぁ爽。俺だよ。.......いくらなんでも寝すぎじゃないのか?そろそろ起きないと先生だってきっと怒る。爽は知らないかもしれないけど、遅刻の罰はすっごく重いんだよ」

そう言っても起きてくれなかった。

本当に怖いんだよ、先生は。

爽、わかってる?

どれだけ訴えかけても、爽が起きてくれることはなかった。

「先生、おかしいよ」

ドアを開けてくれた医師に言う。

彼は、何も言わなかった。

口を硬く結び、俯いていた。

「お母さん....爽、いつもこんななんですか?」

今度はお母さんに尋ねる。

お母さんは、一言ずつ、言葉を選ぶように言う。

「いつもは、早起きしてくれるんだけどね。もう....起きれないみたい」

嘘だ。

きっと嘘だ。

いたずらをしているんだ。

......あぁ。そうか、これは夢なんだ。

''爽''

そう呼ぼうとした時。

「廉くん」

お母さんに呼ばれ、振り返る。

お母さんは何も言わずに、首を横に振るだけだった。

顔を歪めたまま、静かに。
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