後悔しない、ひとつのこと
頭が真っ白になる。

復讐したいとか、そんなことを思っているわけではない。

ただ、何があったのか。

それを詳しく知っている人が目の前にいる。

その事実が、俺を混乱させた。

「あの時、俺は刑事課に配属されて1年ぐらいだった。あの事件は、特に気持ちのいいものではなかったよ」

「………」

何も言わない俺を見て、先輩は迷った顔をした。

でも、続けてくれた。

「お母さんを刺した男は、強盗だった。いつも娘さん1人だったから狙われてたみたいだ。あの日はたまたまお母さんが早く帰っていた。そして、お母さんが刺された。この先はお前だって知ってるだろ?」

「.....はい。..........現場は、どうでしたか」

「......リビングのドアの前に、鞄があった。キッチンでお母さんは刺されていたから、驚いて落としたままだったんだろう。娘さんのものと思われる靴も玄関に置いたままだった」

.........爽

爽はやっぱり強いんだね。

お母さんが刺されているのを見ても....驚いたはずなのに。

信じられなかったはずなのに。

辛くて、苦しかっただろうに。

一生懸命逃げたんだ。

それはきっと、お母さんを守るためでもあった。

爽には一生敵わないなぁ。



俺は爽のこと。

事件のこと。

まだ完全に割り切れてないんだ。

その証拠に、涙がとめどなく出てくる。

でも......下は向いてない。

こんな風に、誰かの前でも涙を流せるようになったんだ。

それは_

爽のおかげだから。

泣いてしまうこともあるけど。

顔はあげるんだ。

あげられる。


爽。

爽にこの気持ちは伝えられなかった。

でも。

直接は伝えられなかったけど。

ずっと思っているよ。

爽が好きだ。

ずっと_俺の居場所なんだ。
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