幸せの青い小鳥を助けたら、隣国の王子に番になってくれと求婚されました
「ありがとうございますは?」
「……ありがとう、ございます」
「声が小さいのだけれど!?」
「あ、ありがとうございます!」
シーラがありったけの声を振り絞ってそう言うと、キリルはフン、と鼻で笑う。そして、テーブルの上にある一通の手紙に気付き、手紙を指でつまんだ。
「あら、ハルベルト様からのお手紙?こんな辺鄙な場所へわざわざお手紙を送ってくださるなんて、ハルベルト様はお優しいのね」
ハルベルトは親同士が決めたシーラの婚約者だ。シーラをランドベル家から早く追い出したい父親が勝手に進めた婚約なので、ハルベルトとは一度しか会ったことが無い。
「お優しい方なのかもしれないけど、別にシーラのことを思って手紙をくれているわけじゃないのよ?ただ、家同士で決めた結婚相手だからと義務で送ってきているだけ。勘違いしないことね。それから、この手紙はあなたみたいな女には必要ないわよね?」
そう言って、あくどい笑みを浮かべながらキリルは手紙をびりびりと真ん中から破っていく。
「な、なにをするんですか……!」
「うるさいわね、誰がしゃべっていいと言ったの?」
びりびりと手紙を細かく破きながら、キリルはシーラをきつく睨みつける。あまりの恐ろしさにシーラが絶句していると、キリルは破った手紙を両手でまき散らした。