幸せの青い小鳥を助けたら、隣国の王子に番になってくれと求婚されました
「あはは、あー楽しい。さて、可愛い妹の顔も見れたことだし、私は帰ることにするわ」
そう言ってキリルは玄関まで歩き、くるりと振り向いてシーラを見た。その顔には嫌らしい笑みが浮かび上がっている。
「また、遊びに来るわね」
バタン、と扉が閉まり、シーラはその場に崩れ落ちた。
「どうして……どうしていつも……」
シーラが床に散らばった手紙の破片を見つめていると、パタパタと走って来る足音がする。
「シーラ様!大丈夫ですか!?」
駆けつけて来たのはメイドのフルールだ。元々はシーラの母親のメイドをしていたが、シーラの母親が亡くなってからはシーラ専属のメイドとなった。この屋敷にいるのは、フルールの他に執事のハンドレーだけだが、ハンドレーはシーラの父親直属に雇われているため、シーラのいる屋敷にはたまにしかやってこない。
「すぐにお助けすることができなくて申し訳ありません。キリル様がいらっしゃる時は、シーラ様と二人きりにするようにとキリル様に言われておりますので……」
申し訳なさそうに言うフルールに、シーラは首を振って悲し気に微笑む。
「いいのよ、お姉さまの言うことは絶対だし、言うことを聞かなければフルールだって危ないもの。こうして心配してくれるだけでも嬉しいわ、ありがとう」
フルールに手を取られながら立ち上がると、シーラは小さくため息をつく。
(次はいつ来るつもりなのかしら……私のことが嫌いならわざわざ会いになんて来なければいいのに)
散らばった手紙の破片を拾いながら、シーラはまたいつ来るかわからないキリルの脅威に怯えていた。