【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
アデラールのシルヴィーへの想いはとどまることを知らない。
あふれ出す感情を受け止めきれずに口端がピクリと動く。
これは重いという一言で片付けるには足りないかもしれない。

(重い……じゃなくて激重だわ!)

そんなアデラールに好かれている事実を改めて自覚したシルヴィーは震えていた。

(手遅れかもしれない。十三年前にアデラール殿下を助けた日から……もう)

しかし多少なりとも捻くれていて母以外の愛情を知らない自分には、このくらいの方が丁度いいのかもしれないと思ってしまうことが一番怖い。
それに、ホレスのことを考えたら彼と共にいる方がいいのだろうか。
シルヴィーはアデラールに絆されつつある事実を認めざるを得ない。


「大丈夫、僕と結婚したこと絶対に後悔させないからね。はい、指輪」

「ふぁ……!?」


シルヴィーに跪いて指輪を渡すアデラール。
その指輪の宝石の大きさと眩さに目眩がする。


「あの……こんな高価なものはいただけません」

「……え? 困ったな。シルヴィーに似合いそうだとあと五個ほどオーダーしてあるんだけど」

「そ、そんなに!?」


シルヴィーは開いた口が塞がらなかった。
しかしそんなに贅沢をしていいのかと焦っていると……。


「僕はシルヴィーのために十三年前から蓄えているんだ。欲しいものがあったら何でも言ってね」

「いえ……」

「あ、そうだ。僕以外の前でお酒飲むのは絶対に禁止。約束できるよね?」

「…………はい」


その時のアデラールの顔は恐ろしかった。
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