人魚のティアドロップ

それからまたも数か月経って私たち”家族”は久々に都心に出てきた。

季節は秋。少し肌寒くなってきた今日この頃。

淡いブルーのワンピースは総レースでパンプスとクラッチバッグは白。

「うーん、変じゃない?」

今まで海斗のお世話や仕事でいっぱいだったからオシャレなんてしばらくしてなくて、久しぶりに着るワンピース姿で翔琉に問いかけると

「すっげぇ似合ってると思うけど。な?海斗。ママきれいだよな~」

「うん、ママかわいい。人魚姫みたいだよ」

「ふふ、ありがと」

私は海李先輩がくれたティアドロップのネックレスと翔琉がくれた指輪をきっちり確認して結婚式場の鏡の前でくるりと一周していると

「そのネックレスも、そのドレスに似合ってるしな」と翔琉がにこやかに笑う。

翔琉はたぶん気づいている。このティアドロップ型のネックレスをくれたのが海李先輩だと言うこと。そして海斗が海李先輩の子だと言うこと。

でも何も言わない。それが翔琉の優しさ。

私たちは式にも呼ばれていて、これまた幾らお金掛けたの?と聞きたいぐらい豪華賢覧なチャペルの長いすに座って、花嫁である沙羅先輩の登場を待った。

やがて音楽とともに現れた沙羅先輩はこれまた豪華なウェディングドレスを着て登場した。父親であろうと思われる男性と腕を組みながら私の横を通り過ぎるとき、ちょっと勝ち誇ったように口角が意地悪に持ち上がったが、私と私の隣に居る海斗と翔琉を見ると目を開いた。

私がまさか子供を産んで結婚したことを知らなかったのだろう、動揺をかくしきれない様子の沙羅先輩は途中つまづきそうになった。

ふっ、いいざま。

どこでどう嗅ぎつけたのか謎だけど私に結婚式の招待状を送ったのは間違いのようね。

私は今、幸せよ。あなたよりずっとね。
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