至上最幸の恋
 ……そう思っていたけれど。数日後、事務所から呼び出しがあった。

「黒瀬くんから聞いています。カメラマンの磯崎さんと、かなり親しいそうね」

 向かいに座る高梨さんが、人差し指で机をトントンと叩きながら言った。その横では、黒瀬さんが額にうっすら汗をにじませ、肩をすぼめている。

「えぇと……親しい、というほどでは……」
「だけど個人的に連絡を取り合っているのよね? この前も、撮影終わりに送ってもらったそうじゃない」
「それは、知人のお祝いがあったからです。磯崎さんもご存知の方で」
「知っています。浅尾瑛士さん、だったかしら」

 黒瀬さんにお話ししたことは、すべて高梨さんに筒抜けなのね。統括している方だから当たり前ではあるけれど……胸の内まで見張られているようで、少し息苦しい。

「磯崎さんと浅尾さん、どちらかとお付き合いしているの?」
「していません」
「あなたにはその気がないってことね。それなら、言い寄られているのかしら?」

 言い寄られているなんて……そんな言い方、ひどいわ。でも、ここで感情的になってはダメ。高梨さんは、心配してくださっているだけだもの。

「おふたりからお誘いを受けたことはありませんわ。ただ親切にしてくださっているだけです」
「そう」

 短く言うと、高梨さんは深いため息をついて、椅子の背もたれに体を預けた。
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