至上最幸の恋
 絵のタイトルには「明日」と書いてある。私が顔を向けているのは左側……きっと、未来のほう。

 周りの才能に圧倒されて、自信が持てなくて……大好きだったピアノを弾くことが苦しくなっていた、あのころ。それでも瑛士さんのお言葉に勇気をいただいて、必死に自分を磨いた。

 瑛士さんと出会わなければ、いまの私はいない。瑛士さんに恋をしたから、また心から楽しんでピアノが弾けるようになったの。

 そのことを改めて思い出した瞬間、胸の奥に押し込めていた感情があふれる。私は周りの目も忘れて、大粒の涙を流した。

 忘れるなんて、できない。たとえ届かない想いだとしても。この気持ちがあるからこそ、私は私でいられるのだわ。

「エリサ?」

 しばらく絵の前で立ち尽くしていると、名前を呼ばれた。振り返らなくても、その声の主がどなたなのか分かる。

「瑛士、さん……」

 どうして、こんなタイミングで……神さまは、私にまだ諦めるなとでも言うのかしら。
 瑛士さんは心配そうな顔で、私に歩み寄った。

「大丈夫か?」
「え?」
「いや、泣いているから……」

 そうだわ。私、泣いているんだった。
 恥ずかしい。いま、どんな表情をしているのかしら。バッグからハンカチを取り出して、慌てて顔を隠した。
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