至上最幸の恋
「だ、大丈夫ですわ。あの、あまりにも素敵な絵で、感動して……」
「そうか」

 短く返事をして、瑛士さんが絵に目を向けた。
 とても優しくて、温かい視線。まるで恋人に向けているようで、絵の中の自分が、少しだけ羨ましくなった。
 
「ステージでスポットライトを浴びる姿を見て、本当は迷ったんだ。ゆらいでいた過去のエリサを描いていいのかって」

 周りに人が増えてきて、瑛士さんは少し距離を取るように絵から離れた。
 ゆらいでいた、過去の私……確かにそうね。あのころは、不安でいっぱいだったわ。

「でも、昨日がなけりゃ、今日も明日もない。あのときのエリサが、いまのエリサを作っているんだろうと思った」

 静かな声で言って、瑛士さんが私に視線を移す。
 ああ、私にもそんなふうに微笑んでくださるのね。私は言葉が出てこなくて、ただ頷いた。

「だから、この3年間で、エリサがなにを積み上げてきたのか……それを想像しながら描いたんだ」

 この絵は、瑛士さんが私のことを想いながら描いてくださったもの。そう思っただけで、涙がまた滲みそうになる。

 この3年間、私がなにかを積み上げてこられたのだとしたら、それはきっと瑛士さんのおかげ。
 そうお伝えしたいのに、ためらってしまう。自分の気持ちを言葉にした瞬間、なにかを失ってしまうような気がして。
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