至上最幸の恋
 なにもかも遅すぎた。
 律の涙を拭う資格は、オレにはない。どれだけ後悔しても、ふたりで手を取り合うことは、もうできないんだ。

「……悪かった。オレがもっと」
「どうして? どうしてあなたが謝るの? 私はあなたを裏切ったの。嘘をついて、浮気していたのよ」

 オレの言葉を遮るように、律がまくし立てた。
 
「優子の家に泊まるなんて嘘。会社の飲み会で遅くなるなんて嘘。あなたがエリサさんのコンサートに行った日から、私はずっとあなたを裏切っていたの。それなのに、どうして責めないのよ」

 エリサのコンサートは5月だ。半年前からということか。

 律の口からはっきり聞かされても、まるで他人事のように言葉が頭の中を通り過ぎていく。受け入れたくないのか、それとも諦めているのか。自分でもよく分からない。

 相手がどんな男なのか、どうしてそんな関係になったのか。いまは、どうでもよかった。ただ、夫婦関係が終わったという事実が目の前にあるだけだ。

 オレがなにを言っても……いや、きっとなにも言わなくても、律を苦しめてしまう。
 しかし気持ちを言葉にしないままでいるのは、卑怯な気もする。どんな結果になろうと、オレ自身の言葉で伝えなくては。

「責める気がないから、責めないだけだ」

 涙に濡れる律の瞳を、真っすぐ見て言った。
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