至上最幸の恋
 ひとりで生活している父のことを、律はいつも気にかけてくれていた。そのありがたさを、いまさら噛みしめる。

「お前の絵は、もっと多くの人に知られていくはずだ。だから応援してやってくれと、律さんに言われたよ」
「そうか……」

 律は本当に、妻として十分すぎるほど尽くしてくれた。そんな彼女を幸せにできなかった後悔は、この先もずっとつきまとうだろう。
 時間は戻らない。それは分かっている。ただ、忘れてはいけない気もしていた。

「どちらかが悪いというわけじゃない。あまり気に病むな」

 オレの表情からなにかを感じ取ったのか、父が優しい声で言った。

「ふたりともまだ若いんだ。これから先、本当に合う相手と出会うことだってある」
「いや、オレはひとりでいい」
「そう決めてしまわなくてもいいだろう。なにがお前の支えになるか分からないぞ」

 珍しくよく喋る。それだけ、オレのことを心配しているということか。

 父を心配させないために、まともな家庭を築こうと思ったはずなのに。結局、余計な気を揉ませることになってしまった。心から安心してもらえるよう、これから画家として少しでも結果を出さなければ。

「とにかく、いまは絵の制作に集中するよ。律も応援してくれたしな」
「そうか」

 短く言うと、父は立ち上がり、奥の部屋へ向かった。そして小さな箱を手にして戻ってくる。
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