至上最幸の恋
「それで、話というのはなんだ?」
食後の緑茶を淹れたあと、父が切り出した。
「実は、ドライバーの仕事を辞めたんだ」
案外、躊躇せずに言葉が出てきた。
父の表情は変わらない。ただ、緑茶をひと口飲んだだけだ。
「依頼がかなり増えているから、制作の時間を確保するには、仕事を辞めるしかなかった。これまでの絵も売れて、しばらくは食っていけるだけの金も入った」
またひと口、父が緑茶を飲む。やはり感情は読めない。
「これからは画家に専念する。ようやく、絵だけでやっていける目処が立ったんだ。そのことを報告しようと思って」
「そうか」
「反対しないのか?」
「三十路近い息子相手に、いまさら反対してもな。お前はもう独り身なんだし、人様に迷惑さえかけなければ、それでいいんじゃないのか」
意外だ。父はずっと、オレが絵を描き続けることに反対しているとばかり思っていた。
ただ、よくよく考えてみれば、明確に否定されたことはなかった気がする。いい顔をしなかったのは、不安定さを心配していたからなのかもしれない。
「オレはもう、ひとりで大丈夫だよ。もともと結婚には不向きだったし」
「そうは思わんがな」
父が笑った。こんな笑顔を見たのは、久しぶりだった。
「自分にはもったいないくらい、優しい夫だったと言っていたよ」
「律がか?」
「ああ。この前、わざわざ来てくれたんだ」
電話だけじゃなく、直接会いに来ていたのか。それは知らなかった。
食後の緑茶を淹れたあと、父が切り出した。
「実は、ドライバーの仕事を辞めたんだ」
案外、躊躇せずに言葉が出てきた。
父の表情は変わらない。ただ、緑茶をひと口飲んだだけだ。
「依頼がかなり増えているから、制作の時間を確保するには、仕事を辞めるしかなかった。これまでの絵も売れて、しばらくは食っていけるだけの金も入った」
またひと口、父が緑茶を飲む。やはり感情は読めない。
「これからは画家に専念する。ようやく、絵だけでやっていける目処が立ったんだ。そのことを報告しようと思って」
「そうか」
「反対しないのか?」
「三十路近い息子相手に、いまさら反対してもな。お前はもう独り身なんだし、人様に迷惑さえかけなければ、それでいいんじゃないのか」
意外だ。父はずっと、オレが絵を描き続けることに反対しているとばかり思っていた。
ただ、よくよく考えてみれば、明確に否定されたことはなかった気がする。いい顔をしなかったのは、不安定さを心配していたからなのかもしれない。
「オレはもう、ひとりで大丈夫だよ。もともと結婚には不向きだったし」
「そうは思わんがな」
父が笑った。こんな笑顔を見たのは、久しぶりだった。
「自分にはもったいないくらい、優しい夫だったと言っていたよ」
「律がか?」
「ああ。この前、わざわざ来てくれたんだ」
電話だけじゃなく、直接会いに来ていたのか。それは知らなかった。