至上最幸の恋
 私の気持ちを無理に変えようとせず、必ず私の意向を確認して、できるだけ負担のないようにしてくださる。
 黒瀬さんがマネージャーで、本当によかった。心からそう思う。

「よし、そろそろ回復しました」

 にっこり笑って、黒瀬さんは立ち上がった。

「お部屋まで運ぶのを手伝いますわ。近くですから」
「じゃあ、お願いします」

 今度は、さっきよりも少しだけ大きい紙袋をひとつ任された。これはウィーンで有名なシュタウドのジャムね。私も大好きだわ。

 黒瀬さんのおかげで、少しずつもやが晴れてきた。
 私はなにを大切にしたいのか、どう生きたいのか、見えてきた気がするわ。

 あとは、自分の言葉で伝えられるように、きちんと心を整理しなくちゃ。

 翌日からは、夕子さんたちと買い物に出かけたり、ひとりで散歩をしたり、リラックスして過ごした。
 
 磯崎さんとも街で偶然顔を合わせたけれど、いつも通りに振る舞ってくださった。
 お返事は、帰国前日にすると約束している。それまでしっかり考えようと、心に決めていた。

 帰国日が近づいてきたころ、私は瑛士さんにお土産を買った。

 美術館のミュージアムショップで、深い青の表紙にウィーンの街並みが箔押しされた小さなスケッチブックを見つけたの。
 瑛士さんなら、この紙にどんな景色を描かれるのかしら。そう思った瞬間、自然と手に取っていた。
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