至上最幸の恋
 お渡しできるかは分からない。それでも、瑛士さんへの気持ちを、なにか形にしておきたいと思った。

 そしていよいよ、帰国前日。
 夜は荷造りもあるだろうからと、磯崎さんはランチに誘ってくださった。

「オーストリア料理は、本当に美味しいね。この1週間で太ってしまった気がするよ」
「まぁ。まったくお変わりありませんよ?」

 磯崎さんは、普段と変わらない様子だった。きっと、私のことを気遣ってくださっているのよね。

 いつでも優しくて頼りになる。そして、とても真っすぐで、静かな熱を胸に秘めた方。
 
 もし、出会う順番が違っていたら……ううん、こんなことを考えるのは失礼ね。
 いつ出会うか、どう出会うか……それもすべて、ご縁だもの。
 
「街は綺麗だし、料理は美味しいし、ウィーンを離れるのがすごく名残惜しいよ」
「私も、この街は大好きです」
「思い出がたくさんある、大切な場所だもんね」
「はい」

 私が頷くと、磯崎さんは微笑んで、メニューへ視線を戻す。
 踏み込まないでいてくださることが、いまはありがたかった。
 
 それから、本場のオーストリア料理をしっかり味わう。
 香草の香りと、ソースの深い味わいが口の中に広がる。それでも、胸の奥に残る緊張だけは消えなかった。

 食後の紅茶が運ばれてくると、磯崎さんが静かに切り出した。

「それで、僕のことを考える時間は作ってくれたかな?」

 ほんの少し、胸がざわつく。
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