始まりは一夜の出会いから
「…うん。うん、絶対それが良い!」

「…寂しくない訳じゃない…ですよね。俺も離れたくないし、寂しい」


 そう言いながら抱き寄せて私の頭を撫でてくれる。

 その優しさが苦しくて辛くなるけど、絶対私達なら乗り越えられると信じているから、不安はない。

 絶対新くんの前では泣かないと思っていたのに、思わず涙が流れる。

 送り出すって覚悟は出来ていても、寂しいし離れたくない。ずっと一緒に居たい。


「…私も、着いて行けばよかった…?」

「ううん、俺の勝手でこうなったから、有咲さんは悪くない」

「勝手じゃないよ~~~~、凄い事なんだよ~~~~~」


 仕事を頑張ってきた実績がここで報われるのは凄く喜ばしいのに、それを純粋に喜べない私が全て悪い。


「寂しいけど、楽しみですね。遠距離」

「楽しみ?何で?」

「遠距離で沢山俺が恋しくなって寂しがっている有咲さんに会えちゃったりとか、本社でもしごできな俺に増々惚れ直してもらったりとか」

「…バカ」


 本当にバカ。これ以上好きにさせられたら恋しくなりすぎて困るのに。離れられなくなったら困ると言っているのに。

 私の言葉に少し笑った新くんが少し身体を離して私の顔を少しだけ持ち上げると、少しだけ笑って優しく唇にキスを落としてくれる。

 たったこれだけの事でこんなに満たされるなんて思っていなかった。

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