始まりは一夜の出会いから
 その話し合いから日数がすぐに経過して、新くんはここを去る日になった。

 駅のホーム、土曜日だから人はそれなりに混み合っているけど、周りは旅行客も多くて、幸せそうな人も沢山居る。

 ベンチで隣り合わせで座って、その間私達の間に会話は無かった。

 後10分もすれば新幹線は来てしまうのに、こういう時何と声を掛けて良いかも分からないし、いつも通り接しようと思ってきたのに結局いつも通りには出来なかった。

 この状況に痺れを切らしたのか、新くんが私の手を繋いでふと笑いかける。


「早すぎでしたね、話してからの数日間」

「ね、一瞬だった」


 笑ってお見送りしたいのに、きっと私の今の笑顔はぎこちない。

 1人でも大丈夫だよ、応援してるよって全力で伝えたいのに、その日が来てしまえば寂しくて、離れたくなくて、でも仕方ないやりきれなさでいっぱいになっていく。


「遊びに行くし、いつかそっちに行くから受け入れてね」

「待ってます、いつまでも」


 タイムリミットは、もうそんなにない。

 それを実感して新くんの手をぎゅっと強く握りしめた。

 離したくない、離れたくない、って無意識に伝えてしまうかのように。


「あー、やだ。寂しい」


 身体だけでなくそれが思わず言動にも出てしまって、それを笑って誤魔化すと新くんだけは笑わずに私の発言を聞いていてくれた。

 大丈夫って、いつかまた一緒になれるって最近は密に濃い時間を過ごしてきたはずなのに、そんなの意味がないと一瞬で寂しさは襲ってくる。

 笑顔で送り出したい、は何だったのか、涙が溢れて止まらなかった。
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