始まりは一夜の出会いから
「ねぇ、何で!?どういうことなの!?」


 無事についたよと連絡をくれた新くんに電話をして大慌てで問い詰めると、電話の奥で笑っていた。

 今日はホテルに一泊するらしく、時間に余裕もあると聞いていたので電話で遠慮なく問い詰める。


『俺、結婚したくないなんて言ったけど、やっぱり結婚したいなって思った。その為に実家と縁も本格的に切って来たし』

「え!?」

『完全にさよなら、という訳には法的にも行かないんだけどね。それでも俺は勘当されて晴れて自由の身だし、有咲と結婚するのに何の迷いも無くなった。やっぱりこれから一緒って分かってるなら、俺は有咲と堂々と家族になりたい』

「ま、待って。色々と理解が追い付かないの。いつから考えてたの?」

『有咲に別れるって突き放されたあたり?本気で嫌だったから、プロポーズの準備を着々としてた』


 こっちがモヤモヤとしている間にこの男は何をしてるんだ。

 ツッコミどころが多すぎて何から言えばいいか分からないけど、ひとまず私が一番伝えたい事を先に言わなくちゃ。

 新くんもきっとあの瞬間すごく緊張しただろうから。


「…嬉しかった。私との将来を考えてくれた事。ありがとう」


 私の精一杯の気持ちを込めて伝えると、電話の奥から数秒遅れて『…うん』と聞こえてきた。

 凄く嬉しかったのにその気持ちを言えないままだったから。言い逃げなんてずるい。


「…それと、急にため口と呼び捨ては何で?」

『うーん。この瞬間ならきゅんってしてくれるかなって?』

「…計算されてる、嫌」

『でも、きゅんとしたでしょ?』

「した」


 正直に答える私に笑って『本当可愛い』と声を漏らすのが聞こえてくる。

 まだ離れたばかりなのにもう会いたくて仕方ないよ、新くん。
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