始まりは一夜の出会いから
「あ、来た。こっちですよ!」
唯央さんが声を掛けると、その男性はこちらに向いて柔らかく笑みを向けてくる。
そのままこちらに近付いて、まずは私に「初めまして、新の父の西宮と申します」と挨拶をしてくれた。
「…西宮、さん。初めまして、森川 有咲です」
それから新くんの方に表情を向けて「大きくなったな」と言葉を向けている。
新くんの表情はずっと硬いままで、大きくなったなという言葉への返事は無い。
何だかこの場に私が邪魔になってしまっている様な気がして、新くんに「席外そうか?」と問い掛けると、それから私の手をテーブルの下で握りしめて「この場に居て」と言った。
その時の手が何だか震えていて、新くんもずっとこの瞬間が怖かったのだと初めて知る。
「…あの日の学費、返せてなかったから。それだけ返しに来た」
「学費…って、高校時代送ったあの?」
「うちの母親があんたから貰った養育費は全部使って迷惑掛けたから。その分は俺が返す。まだ足りないかもだけど、残りは振込するから口座送って」
そう言いながら封筒を西宮さんの前に置く新くんに、西宮さんは受け取ろうとしなかった。
「…新は、親のどうしようもない事情に巻き込まれただけなんだから返さなくて良い。そもそも仕事を優先させた俺のせいで離婚になったんだから、養育費も慰謝料だと思えばいいだけだよ。親として何も出来なかったんだから、お金だけは受け取ってくれていい」
「俺、そんなつもりであの日金をせびったわけじゃないから。返すって言ったでしょ」
「良いから。これから結婚とかでお金もかかるんだからしまいなさい」
新くんと西宮さんの会話に私も唯央さんも口を挟まずその場に居るだけだった。
私は結婚するって報告で紹介として呼ばれたけど、唯央さんは完全に仲介役だったから、この空気感はしんどいのではないかと思う。
唯央さんが声を掛けると、その男性はこちらに向いて柔らかく笑みを向けてくる。
そのままこちらに近付いて、まずは私に「初めまして、新の父の西宮と申します」と挨拶をしてくれた。
「…西宮、さん。初めまして、森川 有咲です」
それから新くんの方に表情を向けて「大きくなったな」と言葉を向けている。
新くんの表情はずっと硬いままで、大きくなったなという言葉への返事は無い。
何だかこの場に私が邪魔になってしまっている様な気がして、新くんに「席外そうか?」と問い掛けると、それから私の手をテーブルの下で握りしめて「この場に居て」と言った。
その時の手が何だか震えていて、新くんもずっとこの瞬間が怖かったのだと初めて知る。
「…あの日の学費、返せてなかったから。それだけ返しに来た」
「学費…って、高校時代送ったあの?」
「うちの母親があんたから貰った養育費は全部使って迷惑掛けたから。その分は俺が返す。まだ足りないかもだけど、残りは振込するから口座送って」
そう言いながら封筒を西宮さんの前に置く新くんに、西宮さんは受け取ろうとしなかった。
「…新は、親のどうしようもない事情に巻き込まれただけなんだから返さなくて良い。そもそも仕事を優先させた俺のせいで離婚になったんだから、養育費も慰謝料だと思えばいいだけだよ。親として何も出来なかったんだから、お金だけは受け取ってくれていい」
「俺、そんなつもりであの日金をせびったわけじゃないから。返すって言ったでしょ」
「良いから。これから結婚とかでお金もかかるんだからしまいなさい」
新くんと西宮さんの会話に私も唯央さんも口を挟まずその場に居るだけだった。
私は結婚するって報告で紹介として呼ばれたけど、唯央さんは完全に仲介役だったから、この空気感はしんどいのではないかと思う。