始まりは一夜の出会いから
 待っていると先に姿を現したのは…


「兄さん、一年ぶり」


 弟の唯央(いお)さんだった。

 新くんとはあまり似ていないけど、雰囲気は何となく兄弟と言われても違和感を感じない近しい物を感じた。


「唯央、久し振り」

「有咲さんですよね?お話には聞いてます。弟の唯央で、保育士やってます」


 この初めて会ったのにそう感じさせない柔らかな雰囲気は新くんと似たものを感じさせる。

 私も「初めまして、有咲です」と軽く挨拶をして、その後店員さんにアイスティーを注文していた。保育士さんだ、という話は初めて聞いた。


「…父さんは?」

「もうすぐ着くと思うよ。一件電話してから来るって」

「相変わらず仕事人間なんだな。それで離婚したのに」

「会社も大きくなっちゃったしねぇ」


 新くんの嫌味にも感じられる発言をサラッと流して運ばれてきたアイスティーにガムシロップを入れてからストローでクルクルと何度か掻き混ぜてそれから口にしていた。

 私はこの場合何と言葉を掛けるのが正解かもわからず、黙って新くんの隣に居る事にした。

 それから数分してカフェの二階に上って来た上質なスーツを着た男性が辺りを見渡していて、その人があまりにも新くんと似ていて「ね、ねぇ」と新くんの肩を叩いた。

 新くんもふとそちらに顔を向けていて、その男性をじっと見ている。
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