始まりは一夜の出会いから
「そう言えば有咲さんはあの日、花澤さんに誘われて合コンに参加されたんですよね?ずっと断っていると聞いていたんですが、どうして急に参加する気になったんです?」

「それは…、美月がどうしてもって言うので」


 出会いを求めている佐々木さんの前でこんなことを言っていいのか少し悩んでしまうが、正直に答えることにした。

 こんな事嘘を吐いても仕方がない。


「なるほど。通りで緊張しているし、出会いを求めに来ている様子じゃなかったので腑に落ちました」

「あの日、どうして声を掛けてくださったんですか?つまらなかったですよね、きっと」


 そう問い掛けると笑って首を横に振っていた。


「つまらなくなんかなかったです。目が離せなくて、それに素敵な夜だったので」


 あの夜の事を素敵な夜と言えるのか。

 私は全く記憶がないけど、私だったら相手が酔って記憶がない時点でそんな風に言えない。

 佐々木さんが寛容なのか、何なのか。


「あの、恥ずかしいのであの夜の事は忘れてください。本当に私は覚えていないんです」

「嫌です!忘れません。俺にとって大事な日なので」


 大事な日って…、そんな大袈裟な。

 合コンで知り合った女と一夜の過ちを犯しただけだ、そんな大事と呼ばれる様な日ではない。


「それにあの日の有咲さんが可愛すぎて、忘れてと言われても忘れられませんから」

「佐々木さん!」


 あの日の事を話し始める佐々木さんに顔が火照り、慌てて名前を呼んでそれ以上話さないでと牽制をすると楽しそうに笑っていた。

 この揶揄ってくる笑顔が嫌いじゃなくて、むしろ少しときめきすら感じてしまう。

 それからふっと微笑んで時々私の事本気で好きなんじゃないかって目線を私に向けてくる。

 だから、勘違いしてしまいそうになる。

 貴方なら私の事を本気でずっと好きで居てくれるんじゃないかなんて、もうそんな期待したくないのにな。
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