始まりは一夜の出会いから
 建物を出る頃には、出会った時には高く昇っていた陽がもう沈みかけていた。

 かなりの時間ゆっくり過ごして楽しんでいた様で、時が過ぎるのは本当に一瞬だった。

 あと少しでこの人との時間を終わらせなければいけない。
 先程まで楽しかった時間が一瞬で寂しい気持ちに変わった。


「有咲さん、これどうぞ!」


 考え事をしていた時に、佐々木さんから小さな袋を渡されて、首を傾げながら受け取る。


「これは?」

「見てもいいですよ」


 そう言われるがまま、袋の中身を見るとさっき程まで目を惹かれて見ていたペンギンがいた。

 これを買おうか検討していた事なんて、私しか知らないはずなのに、どうしてこれがこの場にあるのか。


「え、これどうして?」

「見てましたよね?真剣に悩んで買ってなかったので俺からのプレゼントで」


 そんな些細な事まで見られていて羞恥心が湧いてきた。

 同時に見逃さずプレゼントしてくれた事も凄く嬉しくて、小さな声で「ありがとうございます」とお礼を言葉にした。佐々木さんは「どういたしまして」と言いながらまた私の手を引く。

 自然に手を引くその姿に、認めてしまうしかなかった。



─────私、この人が好きで仕方ない。



 恋を自覚したと同時に、それでも思い出してしまったのは過去に裏切られた、元カレと浮気相手の情事だった。

 瞼の裏に焼き付いて仕方ないあの光景をいまだに私は忘れられずにいる。

 いつになっても前に進めない私に、恋愛なんて出来るはずがなかった。
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