始まりは一夜の出会いから
 佐々木さんの人柄を知れば知るほど、気になって好きになっていくのはわかっていた。

 最近合コンも断ってくれている事も知っている。

 この間営業部に顔を出したらたまたま佐々木さんがいて、そこで聞いてしまった。


「佐々木さん、また可愛い子と合コンセッティングしてくださいよー」

「今、俺合コン行かない事にしてて」

「え、どうしたんですか。毎度佐々木さんがセッティングしてくれていて助かってたのに!」

「ずっと片思いしている女の子に出会えちゃったんで。今はその子にゾッコンなんです」


 ああ、何それ。好きっ!!!!!!と、ときめいてしまったのは言うまでもない。私はちょろいからそういうことをされるだけで簡単に好きになってしまうのでやめて欲しい。

 でも、ずっとって…。ここ最近の付き合いをずっとって言っているのだろうか。だとしたらかなり大袈裟な表現で違和感を感じた。

 大学時代振られたとか言っていたけど、その間もかなり空いていたしずっと好きだったとは考えにくい。


「へー、佐々木さんに惚れない女の子とか気になるなあ」

「俺には高嶺の花って分かってるんですけどね。受付の森川さん」

「え、有咲ちゃん!?確かに可愛いけどガード固いって有名ですよね。そっかあ、有咲ちゃんか」


 ガード固いとかそんな風に言われているのを知っていたけど、いざ噂を直接聞いてしまえば、スッと何かが冷めていった気がした。

 苦笑いしながら佐々木さんにそんなことを言われていて、恥ずかしい思いをした。

 私が今みたいになった理由を分かってほしいだなんて思っていないけど、それでも好きかって言われるのは良い気がしない。


「ガード固いとかそんな風に思った事無いですけどね。打ち解けたらめちゃめちゃ柔らかく笑ってくれるんですよ。その笑顔が特別可愛いんですけど見たことあります?」

「え、あ、そうなんだ!仲良いんですね、有咲ちゃんと」


 庇ってくれたんだ。

 今まで一緒になって話すか、流す人しか居なかったのに、そんな風に言われたのは初めてで頬が熱くなる。困るってば、これ以上好きにさせられたら本当に困る。

 口元を両手で抑えて、静かにその場から離れた。
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