始まりは一夜の出会いから
 仕事終わり、職場から駅までの道をスマホで仁の連絡先をブロックリストから呼び出して見ていた。

 きっと仁は私の事をブロックせず連絡先を置いているだろう。

 後は会うと言う連絡を入れるだけ、なのだけどその少しの勇気が出ず、ずっと考え込んでいた。

 会って話さなくても、電話で済ませられるならそうしたい。

 出来れば顔なんて見たくないけど、電話だと何となく相手にしてもらえない気がした。

 出来る限り人の多いお店を選んで話そう。
 そう決めて連絡を入れようとすれば肩を突然掴まれた。

 振り向かせられてから、相手の顔が見え言葉を失った。


「この時間くらいに適当に待ってたら会えるかなと思ったら会えたわ。久々、有咲。綺麗になったじゃん」

「触んないで!」


 その手を慌てて払って目の前の男を睨みつける。

 その相手は仁で恐らく制服から職場を特定されて待ち伏せされたのだと思う。している事はストーカーと変わらない。


「なぁ、何で急に連絡取れなくしたの」

「そんなん、自分の胸に手を当ててたら簡単に分かるでしょ!あの日、合鍵だって置いて行ったし、私が来てた事は分かってたくせに!」

「有咲が受験だとか言って会ってくれなかったじゃん。俺だって寂しかったんだよ」


 会えなかったのを私のせいにして、浮気を正当化するつもりだ。寂しかったから浮気してOKなんて通用するはずがない。

 まだ従順で何も言い返さないあの頃の私だと仁は馬鹿にしているのだ。悔しくて仕方がない。
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