始まりは一夜の出会いから
「仁との事整理付けようって前向きになれたの、実は佐々木さんのお陰なんです」

「…え?」

「私も、恋がしたいって思えたので…」


 それだけ言うと、照れが出てきて顔をふいと背けた。

 ここまで言ったらどういう意味か分かってくれるよね。

 中々何も言ってくれない佐々木さんに痺れを切らして佐々木さんの方を向くと手で口元を抑えて少し顔を赤くしてくれている。

 そんな顔見た事が無い。照れている姿がどうも可愛らしい。


「あの、それって…、期待していいんですよね」

「期待、というか、分かっていてくれないと困るので。私が佐々木さんを好きだって…」


 照れ臭さを隠したくて背を向けて歩き出す。

 こんなの久し振りでどうしたら良いか分からない。

 前を歩いていると、佐々木さんに腕をグッと引き戻されてそのまま腕の中に閉じ込められる。


「え!?」

「嘘、夢じゃない?」

「夢じゃないですから!外ですし、目立ちます!」


 背中を軽くポンポンと叩くと、中々離してくれない。

 苦しい程に抱きしめられていて、嬉しいけど周りの目が気になる。


「…今日は帰さなくて良いですよね?」

「え?」

「夢じゃないって、信じさせてくれます?」


 そう言ってようやくゆっくりと瞳が合うとその瞳が熱っぽくて、それなのに真っすぐで逸らせない。逸らせないどころか逃げられない。

 佐々木さんの言葉にゆっくりと首を縦に振ると、そのまま手を繋がれて少し早歩きでどこかに連れて行かれる。

 帰さなくて良い、信じさせてって、そう言う事だよね。

 変に意識してしまって、あの夜は記憶が無かったけど今回は…。
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