始まりは一夜の出会いから
 急いできた先は恐らく佐々木さんの家だった。

 そのまま部屋の中に入らず靴も脱がないで玄関先の壁に強く押し付けられて、嚙みつく様なキスをされる。

 それが嫌なわけでもなくて、こんなに誰かに激しく求められた事も無く、気分が高揚した。こんなに求められて満たされていく。


「んっ…、ささきさ…」

「こんな時まで苗字呼び?俺の名前、分かるでしょ?」

「わ、わかりますけど…」

「呼んで」


 いつも敬語なのにため口でこういう時に少し強引なの、本当に堪らなくなる。どうしてそんなに格好良いのか。


「…有咲さん?」


 早くと急かされる様に名前を呼ばれて、その上に至近距離に顔があるから羞恥心を更に煽られる。


「あ、らたくん…」

「可愛すぎませんか…。本当好き」


 そんな甘い言葉を吐いてまたキスの雨が降り注がれる。

 こんな玄関先でなんて、嫌なのにそれほど求められているという事実だけは嫌じゃなくて、拒めない。


「…久しぶりですし、念願の好きな子となんで、我慢は効かないかも。ごめんね」


 そのごめんねは絶対思っていないし、ずるい。

 普段敬語を使う人がため口になった時の破壊力、恐ろしすぎる。


「…思ってないくせに」

「思ってますよ。嫌って言っても待っても聞かないつもりなんで」


 佐々木さんが急に私の身体を抱きかかえようと触れてきて驚く。


「ちょっと!?」

「俺はここでもいいですけど、丁寧に愛したいのでエスコートさせてくれます?」


 そう言われて人の返事も聞かずに持ち上げられ、靴を脱がされるとそのまま中に入って行く。

 普段は爽やかで紳士的で優しいのに、こうなると少しS気が強くて強引だ。

 ここまで見ると私は騙されてしまったんじゃないかと思う。
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