始まりは一夜の出会いから
 寝室まで運び込まれてベッドに丁寧に寝かせられると、その上に跨ってまた優しく甘いキスを降らせながら私の身に着けている衣服を丁寧に剥がしていく。

 キスに気が取られてそれ以外は何も考えられない。

 あの日の夜もこんな風に優しく抱かれたんだろうか。
 どんな風に私を求めて、抱いてくれたの?
 全て知りたい、私達が始まったあの一夜の事。


「新くん」

「はい」

「あの日と、同じ様にしてほしいです」


 そう言うとほんの少しだけ驚いた表情をして、それから少しだけ微笑むと「仰せのままに」と言って額にキスをしてくれる。

 それから頬や目の横、首筋、鎖骨、胸元には執拗に口付けてくれるけど、何度も何度も身体中にキスを落としてくれるのに唇には全くキスをしてくれなかった。

 あの日、キスはしなかったの?と思ってしまう程に唇は避けられる。

 焦れさせられて、先程の様なキスをしてほしいのに全くしてくれない。


「あ、の、新くん」

「どうかしました?」

「…キス、してくれないんですか?」


 シャツを掴んでそう強請ると新くんの頬が赤く染まっていく。

 私が少しだけ欲張りになると少しだけたじたじになるその姿が可愛い。もっとそういう姿を見てみたい。


「…あ~、もう本当。悪い人。俺の事を煽るのが上手なんだから」


 そう言ってずっと求めていた唇にキスを落としてくれる。

 先程の性急なキスとは違い、ねっとり舌を絡め合う様なキス。

 部屋に響く水音が自分からも出ている音だと思うと、耳を塞ぎたくなる程恥ずかしい。
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