始まりは一夜の出会いから
 そのまま近くの居酒屋に入って久しぶりに夕飯を共にする。

 向かい合わせで座り、久しぶりにスーツ姿の新くんを見れて少し癒された。


「本社どうだった?」

「マジで都会でした。少し歩けば何でもあるし、仕事も本社は規模が違うから面白かったです」


 その話しぶりから新くんは本社に行きたいのかとなんとなく感じた。

 いつもより楽しそうで、たった一言だけど話す姿が輝いているなと思った。


「そっか、いつかは本社に異動したいとか思ってるの?」

「うーん、どうでしょう。今の環境は環境で気に入っているので、その気もあんまりないんですよね。本社に異動なんて事があったらそれはそれで名誉な事ですけど」


 その返事に少しホッとしてしまった。

 もし行きたいと即答されていたら遠くない未来で遠距離恋愛になってしまう気がしたから。

 こんな時まで私は自分の事しか考えられていなくて、同時に自己嫌悪にも陥った。


─────新くんのやりたいことをいつか私が邪魔してしまう、そんな日が来るんじゃないか。


 まだ見えない漠然とした不安に迫られていた。
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