始まりは一夜の出会いから
「だって、男もいるなんて今日まで聞いてなかったし!受付の人達だけだと思ってたから」


 新くんはそう言いながら駄々をこねている。

 受付は女性で構成されがちだけど、今日の飲み会は営業部も集まってきていて、結構賑やかな会社の飲み会だった。

 それをどこから情報を入手したのか新くんが先程「今日の飲み会って営業部も居るって本当ですか」と、恐ろしい物を確認するかの様に問い掛けてきたのだ。

 私も今日聞いたから新くんにその報告をまだしていなかったのだけど、私から言うよりも先に情報を掴んでいた。他社のネットワークまで持っているなんて彼の交友関係はどこまで広いのか。


「新くん、また夜には帰ってくるし二次会は行かずに帰ってくるよ。だから待ってて」


 元々そのつもりだったし、と宥める様に頭を撫でると、少しだけ抱き着いている力が緩んだ気がした。


「二次会、行ってもいいですけど迎えに行かせてください。夜道、心配なので。後、くれぐれもお酒には気をつけて!」

「大丈夫だよ、そんなに飲まないから」

「あ、わかってなーい。その言い方」


 不思議な発言をする新くんに首を傾げると、ほんの少し笑って私の唇に軽く口付けてすぐに離す。まるで奪うかの様にされたキスにもときめかされて仕方がない。


「とにかく、連絡くださいね。行ってらっしゃい」


 そう笑顔で手を振ってくれる新くんに「行ってきます」と私も手を振り返す。

 私だって週末の新くんとの時間が奪われるのは寂しいから、早く帰ってこようと思う。
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