始まりは一夜の出会いから
 居酒屋の大宴会場にて、周りもアルコールが進んだ頃、美月と話していると営業部の人に突然肩を組まれた。

 誰かに急に肩を組まれる事なんて無いから驚くと、酔いが回っているのか顔も赤く、力の加減が出来ていない様で少し痛い。


「有咲ちゃんってー、俺のタイプなんだよねー。彼氏居るの?」


 アルコールの場でこういうことは決して多くは無いのだけど、営業部の人の酒癖はよろしくないと聞いていたので、もう少し気を付けるべきだったとようやくここで思う。

 新くんの気を付けて、はこういう意味を理解しての気を付けて、だったのかもしれない。


「この子ダメですよ、超面倒臭い彼氏居るので!」


 少しどう対応しようか困っていた私の代わりに、美月がその手を強めに払って、ガードしてくれている。

 こういう美月のはっきりしている性格がきついと感じるらしくて、彼氏がいるからと尚更強めに断る美月に声を掛ける男性はいない。

 私も美月の様な態度を取れたらいいのだけど、波風立てない方向を考えすぎた結果、曖昧な態度になり結果はっきりできなくなる。


「あー、有名だよね。佐々木さんの有咲ちゃんへの溺愛」


 他の女子社員からも話題に上がって、そんなに有名なのかと他人事の様に聞いていた。

 受付に居るとよく来客対応しているから全くそう言う噂話は耳に入って来ないので、全然知らない。


「有咲ちゃんの事他の男性社員が言おうものなら、その男に牽制しに行くもんね。めっちゃいい笑顔で」

「え、何ですか?その知らない情報」


 美月も周りも「え?」と驚きの表情をする。どうして逆に私以外の全員が周知しているのかが不思議で仕方ない。
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