転生脇役令嬢は原作にあらがえない
 三人目の男は、この国の王太子である。彼の出会いは三人の中で一番遅い。デビュタントも終わった花まつりの季節、王太子は一人お忍びで祭りにやってくる。そこでロッティと出会うのだ。

 王太子にはもともと、忘れられない初恋の少女がいた。婚約者候補に上がっていた彼女が、婚約をすると決まった段階で、彼女は突然死してしまった。愛する人を失ってしまった喪失感を抱えて病んでいた王太子の心を、明るく優しいロッティが癒し、立ち直っていくのだ。そうしてロッティに救われた王太子は身分を隠したままの交流を続けてはいたものの、当然のようにロッティに想いを寄せるようになる。

 物語の序盤は、ロッティを囲む三人の男がかわるがわる彼女にアプローチを続け、ドキドキするシーンやワクワクするシーンなどもありつつ、和やかに進んでいく。

 しかし、中盤以降になって物語は、それまでのコミカルさから一転してかげりを帯びる。

 ロッティはその優しさゆえに、男性陣のアプローチを断ることができない。誰の心も裏切らないその優しさは言い換えればただの優柔不断だ。その態度は、男性たちを無駄に期待させて執着を深めさせた。一人がアプローチすれば、他の二人がロッティを取られまいと対抗してより過激なアプローチをする。けれどロッティは決定的に誰かを選ぶということはしない。ロッティの気持ちが傾くのを待っていられないと、最初に彼女に明確に「好きだ」と告げたのは王太子だった。しかし、この時、ロッティはすぐには返事ができなかった。生まれて初めての愛の告白に戸惑ったからだ。

 その返事を王太子が待っている間に、物語を大きく変えてしまうような大胆な行動に出たのはクレイヴだった。

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