鏡の中の嘘
2章 洋館と鏡 The Mirror in the Mansion
Voice that Sinks
なぎの家に入ると、美奈は思わず声を漏らした。
「すごい…なんか、時間が止まってるみたい」
「祖母が大切にしていたものばかりで…今も、なるべくそのままにしているんです」
居間には、古い柱時計が静かに時を刻んでいた。
棚には陶器の人形や、レトロなラジオ。
そして、部屋の奥に、大きな鏡が立っていた。
「この鏡…すごくきれい。アンティーク?」
「ええ。とても古いものです。祖母が“特別な鏡”だと言っていました」
なぎは、鏡の前に立ち、そっと手を触れた。
その瞬間、鏡の表面がふわりと揺れた。まるで水面のように。
「えっ…今、揺れた?」
「美奈さん。少しだけ、こちらへ来てみませんか?」
なぎが手を差し出す。
鏡の中には、なぎとそっくりな少女が立っていた。
でも、表情が違う。
笑っているのに、目が笑っていない。
「こっちの世界は、静かで、誰にも邪魔されません。美奈さんなら、きっと気に入ると思います」
美奈は、なぎの手を見つめた。 鏡の中から、かすかに風の音が聞こえた。春の風とは違う、冷たい風。
「…なぎちゃん?」
なぎは、優しく微笑んだ。
「大丈夫。少しだけ、見てみましょう」
「うふふ…」
その笑い声は、いつもの優しい声と違って、どこか空っぽだった。
「え…どうしたの…?なぎちゃん…?」
なぎは、鏡の中でこちらを見つめたまま、ゆっくりと首をかしげた。
その瞳は、まるで感情が抜け落ちたように、ただ静かに揺れていた。
「ねえ、美奈さん。ここなら、ずっと一緒にいられますよ」
「やだ…なにそれ、、、どういうこと」
美奈は一歩、後ずさった。
でも、足元がふわりと揺れた。
まるで床が水に変わったように、重力がねじれる。
「ごめん!!やっぱり帰る!!」
叫んで、玄関の方へ駆け出そうとした瞬間—— 鏡の中から、なぎの手が伸びた。
「だめですよ、美奈さん。もう、選んでしまったんですから」
その手が、美奈の腕をつかんだ。
冷たい。氷のように、冷たくて、重い。
「やだっ、やだやだっ!!」
美奈の叫び声が、鏡の中に吸い込まれていく。
視界がぐにゃりと歪み、空気が水に変わる。
そして——美奈の姿は、鏡の中へと、静かに沈んでいった。
「すごい…なんか、時間が止まってるみたい」
「祖母が大切にしていたものばかりで…今も、なるべくそのままにしているんです」
居間には、古い柱時計が静かに時を刻んでいた。
棚には陶器の人形や、レトロなラジオ。
そして、部屋の奥に、大きな鏡が立っていた。
「この鏡…すごくきれい。アンティーク?」
「ええ。とても古いものです。祖母が“特別な鏡”だと言っていました」
なぎは、鏡の前に立ち、そっと手を触れた。
その瞬間、鏡の表面がふわりと揺れた。まるで水面のように。
「えっ…今、揺れた?」
「美奈さん。少しだけ、こちらへ来てみませんか?」
なぎが手を差し出す。
鏡の中には、なぎとそっくりな少女が立っていた。
でも、表情が違う。
笑っているのに、目が笑っていない。
「こっちの世界は、静かで、誰にも邪魔されません。美奈さんなら、きっと気に入ると思います」
美奈は、なぎの手を見つめた。 鏡の中から、かすかに風の音が聞こえた。春の風とは違う、冷たい風。
「…なぎちゃん?」
なぎは、優しく微笑んだ。
「大丈夫。少しだけ、見てみましょう」
「うふふ…」
その笑い声は、いつもの優しい声と違って、どこか空っぽだった。
「え…どうしたの…?なぎちゃん…?」
なぎは、鏡の中でこちらを見つめたまま、ゆっくりと首をかしげた。
その瞳は、まるで感情が抜け落ちたように、ただ静かに揺れていた。
「ねえ、美奈さん。ここなら、ずっと一緒にいられますよ」
「やだ…なにそれ、、、どういうこと」
美奈は一歩、後ずさった。
でも、足元がふわりと揺れた。
まるで床が水に変わったように、重力がねじれる。
「ごめん!!やっぱり帰る!!」
叫んで、玄関の方へ駆け出そうとした瞬間—— 鏡の中から、なぎの手が伸びた。
「だめですよ、美奈さん。もう、選んでしまったんですから」
その手が、美奈の腕をつかんだ。
冷たい。氷のように、冷たくて、重い。
「やだっ、やだやだっ!!」
美奈の叫び声が、鏡の中に吸い込まれていく。
視界がぐにゃりと歪み、空気が水に変わる。
そして——美奈の姿は、鏡の中へと、静かに沈んでいった。