僕と影~生首に出会う

28.福音

 風呂敷の上で、生首は泣いていた。


「大丈夫?」

「……ああ。問題ない……ここまで連れてきていただき、感謝しかない」


 影がぬるっと起き上がって、生首にかざしていた檜扇を外す。

 慰霊碑の後ろから、半透明の体が出てきた。

 ……半透明で、ぼろぼろの鎧を着けている。

 日本史の教科書で見た鎧の、もっとしょぼい感じ。

 体が両手を差し出した。

 影が僕と体の間に割って入り、生首を風呂敷越しに差し出す。

 体は生首を受け取って、首に乗せた。半透明だった体が、スッと濃くなった。


「……やっと会えた」

「よかったね」

「うむ。感謝してもしてもしきれぬ」


 涙に濡れた頭を下げたその人は、僕と同じか、少し大きいくらい。

 猫娘に髪をあげちゃったから、頭はぼさぼさだし、来ている鎧だってぼろぼろだ。

 でも、安心した顔で、僕を見ていた。

 影は相変わらず、僕とその人の間に立っている。

 この人、これからどうするんだろう?

 口を開きかけたら、お寺の鐘が鳴った。

 鳴り終わるまで鐘撞き堂を見て、その人に顔を戻したら、また薄くなっていた。

 たぶんあの鐘の音はこの人にとって福音なんだろう。


「お疲れさまでした」

「うむ。世話になった。何か礼ができれば良いのだが」


 そう言いながらその人は首を傾げた。


「じゃあ、丁半博打でどうやって猫娘に勝ったか教えてよ」

「ああ、あれは」


 その人は面白そうに笑って、種明かしをしてくれた。

 なるほど、僕にもできそうだ。

 影が嫌そうに体を揺らした。
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