雨宮さん家の大型犬〜飼い主は最愛のわんこを何時でも愛でていたい〜
「あ、あのね!あのね?あこちゃ…」

「しーずーとーくんっ!ねぇねぇ!」


最近、よくある光景。
常に一緒にいる、私達の間に無理やり入り込んでくる、この人物…。


「煩いよ、桜雅(みやび)!俺今忙しいの!」

「えぇー?だってぇー…桜雅、つまんなーい。静人くんてば、雨宮さんと話してるだけじゃーん!」


むかむか

じゃーん、じゃないのよ、ほんと。


あー…いい加減、胃の辺りが、気持ち悪い。

なんで、こうも人の間に入り込もうとするかね?

この人は…。


私は、髪の毛を掻き上げつつ、しーちゃんの動向を伺う。

私を選んでくれるよね?
この場合。

でも、しーちゃんは遠藤さん本人曰く、幼稚園の頃に出会った時にしーちゃんに一目惚れして、それ以来しーちゃんのことを好き好きと迫りまくってる、らしい…。
最近になってシンガポールから帰国したという……しつこい、いや…基、しーちゃんのストーカーみたいな女のコと私を見比べて、ごめんね?というポーズを私に取ってから、彼女を廊下に連れ出した。





…………。


ほんっとに、むかむかするんですけど?

もー…なんなんだ、この胃もたれみたいなドス黒い感情は?

そんな時に限って、後ろからちょんちょん、と肩を叩かれる。


「雨宮さん、あの……話があるんだけど、いいかな?」


はぁ?何言ってくれちゃってんの?
つーか、気安く触んな!
こンの、変態!


とか、思いながらも、私は営業スマイル全開で、対応をする。


「何かな?私、これから次の授業の準備したいんだけど?」


あーぁ。
しーちゃんがここにいてくれたら、すぐにこんなヤツ追っ払ってくれるのに、なぁ。


「ちょっとでいいんだ、あのさ…俺…」

「んー…ごめん。その先は聞けないわ」


また一つ髪の毛を掻き上げて、私は足を組替えした。


しつこいなー…ほんと、こういうヤツが一番嫌い。


で、ふと廊下の方を見ると、しーちゃんの腕に触りまくってる遠藤さんが見えて…。


がたんっ


「え?雨宮さん…?」

「トイレ!」


あまりにもむかついたので、教室に響くような大きな声で、そう叫んでからしーちゃんのいる方じゃないドアから、教室を出た。
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