行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした
「ん? どうかした?」
「あの……良かったら少しお話ししませんか? その……聞きたいこともあるし、何ていうか……外に居られるより、同じ部屋に居てもらった方が落ち着くので……」

 どうせ見張られるのなら部屋の外に居られるよりも同じ部屋の方が落ち着くと思った私がそう口にすると、

「え? あ、ごめんごめん、別に心ちゃんのことが怪しいから見張ってる訳じゃないんだ、気を悪くしたならごめんね」

 一瞬驚きの表情を浮かべつつ、『ごめん』と謝ってくる。

「え? そうなんですか?」

 これには私もびっくりして、思わず聞き返してしまう。

「なら、どうして……」
「ほら、キミさ、あのビルの屋上から飛び降りるつもりだったんでしょ?」
「そ、そうですけど……」
「兄貴に言われたんだよ、変な気を起こさせないよう様子を見ておけって。要は心配してるんだよ、心ちゃんのこと」

 そして、教えてくれたのは私が怪しいから見張っていたのではなくて、自殺しようとしていた私の気が変わり、妙な気を起こさないように見張っているということだった。

「……そう、だったんですね……。てっきり素性が知れないから見張っているんだと思っていました」
「あーまあ普通はそう思うよね。けど、そういうのは探ろうと思えばすぐに出来るから見張るまでも無いんだ」
「え?」
「あ、ううん、こっちの話。ま、そういう訳だから、見張られて気は休まらないかもしれないけどさ、俺も兄貴からの命令に逆らう訳にはいかないから我慢してね」
「はい……」

 そんなことを言われてしまうと見張るのを止めて欲しいとは言えず、頷くしか無かった。
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